夏休みに突入した七月下旬。
来週、私たちは海に行く予定になっている。
追試を受けなんとか補習を免れた真は、無事正気を保っていた。
追試結果を待っていた間の真はまるで、人が変わったようだった。
『筋肉……筋肉……ひぃ!』
と、ブツブツ唱えながら震えていた。
相当、あの筋肉もりもりの先生が嫌なんだろう。
何をされたのかは知らないけど。
「今日は買い物に行こうと思います。ただし、余計な物は買わないこと、いい?」
透の指揮の下、久々に出掛ける準備をしていた。
「はーいっ」
「返事が元気なのはいいけど、夕が1番危ないんだからな?」
「そ、そんなことないもーん」
「早く行こうよ」
支度を終えた蒼空が待ちくたびれたと、透の裾を引っ張った。
同じく支度を終えた私はくるりと周りの3人を見回した。
皆の私服を久々に見た気がして新鮮だ。
お洒落だなぁ。
ふと目に入ったのは蒼空の胸元に光る青い石のペンダント。
綺麗。
「ん?どうしたの」
ジッと見つめていると、その視線に気づいた蒼空が声を掛けてきた。
「そのペンダント、綺麗だなと思って」
「……あぁ、これは、貰い物」
女の子から貰ったのかな。
センスがいい。
「大切な物なんだね」
「っ……うん。優那も、その髪飾り似合ってる」
キラキラとした細かなビーズで刺繍された髪飾り。
「ありがとう。私もこれ、貰い物なの。…………誰に貰ったのかは、わからないんだけど」
そっとその髪飾りに手を触れた。
アクセサリーケースを開けばそこにあって、母に訊いても買った覚えはないとのこと。
ならきっと誰かに貰ったのかもしれない。
例えば、親戚とか。
なんとなく大切な気がして、いつも目の届く場所に置いてある。
これをみると何だか胸がざわつく。
それを今身に着けている私は少し変。
何故なら、今まで1度もその髪飾りを付けたことが無かったから。