目の前には大きな門が立ちはだかる。
「大きい……」
あまりの佇まいに圧倒される。
まさかここまで大きな学園だとは思わなかった。
大きな石柱に彫られた文字。
"藤咲学園高等部"
ガタガタガタ………
突如開き始めた大きな正門。
これは、入っていいんだよね。
少し不安になりながらもゆっくり足を踏み入れた。
別れ際母に渡されたメモによると、まずは"寮に向かうこと"ね。
簡略化された地図を頼りに、丸腰になりながら寮へと向かった。
学園自体が広ければ寮も大きい。
幾つか寮の建物があるけれど、指定されたのは一つだけ風貌が違う寮であった。
大きな屋敷のような……。
「……ここ?」
洋風な大扉を開け建物内へと入ると、何だか騒がしかった。
「おい、俺のネクタイ何処だよ。これ俺のじゃねーし」
「知らない」
「って、蒼空!お前がつけてるやつ俺のだろ」
「別に同じカラーだしどうでも良くない?」
ん……?
「良くねぇよ!」
「二人とも朝からうるさいなぁ。もう少し静かにできないの?特に真」
「夕(ゆう)、おはよう」
「おはよ、蒼空。瞼閉じそうだけど大丈夫?」
「なんとか」
「あのー」
恐る恐る声をかける。
「あ?誰だお前」
片耳にピアスを付けている、いかにも不良のような人は不機嫌全開だ。
「……女の子?」
キョトンとする黒髪で眠たそうな人。
「女子寮は別の場所だよ。あ、間違えちゃった?」
「そうじゃなくて」
「……っ!もしかして君、新しいく入ってきた子!?」
肩がびくりと揺れる。
今度はまた別の人が玄関へとやってきた。
柔らかい雰囲気の優しそうな人だ。
それにしても男の人が4人……
「間違えました」
後退る様に私は一歩後ろへ下がると背中に扉がぶつかった。
私、聞いてない。
こんなところで住むなんて。
きっとこれは間違えだ。
「ちょっと待って!」
先程突如現れた高身長の、見た目は優しい人が私を止めた。
「間違えじゃないよ。確かに今日、ここに新しい子が入ってくるって聞いてる。それって君だよね?」
「透、僕達全く知らないんだけど」
「あれ、話してなかったっけ?」
「あー、もしかしてそれで昨日いくつもダンボールが運ばれて来たのか」
「ふーん」
興味なさげに相槌を打つ人は、今にも寝そうだ。
「まあ、とりあえず部屋に案内するよ」
「は、はぁ……」
なんなんだろう、この寮は。
とても、不思議な感覚がする。


