「優那、眠い」
「おい、寝るな!」
今にも瞼を閉じてしまいそうな蒼空を寝させまいと大きな声を出す真。
「……ねぇ優那、寝ていい?」
「今は寝ちゃダメ。皆でゲームするって約束したでしょ?」
何故か今日は皆でテレビゲームをしようという話になっていた。
持ちかけたのは、真だ。
「ん。優那がそういうなら、寝ない」
「おい透、あいつとうとう俺を無視するようになったんだけど」
真がまたキレてる。
まあ、原因は蒼空だけど。
「真と蒼空って仲悪いよね。僕も手に負えないくらいに」
夕がやれやれといった様子で言う。
「どうやったら仲直りしてくれるかな……」
透も手こずっているようだ。
「透、2人っていつからこんな感じなの?」
「えっと、1年の夏くらいからかな」
ほぼ一年前……まだその頃、私はここにいない。
だから何があったかは分からない。
気になる。
「あのときはびっくりしたよ。まだ僕達がこの寮に移って、1ヶ月経ったくらいでさ、仲良くやれそうだなぁと思った矢先だったし」
「そうそう。僕もびっくりしたよ」
「でもさ、今となっては蒼空がほぼ一方的に真を嫌ってるだけだよね」
「だって………いつも真は俺の邪魔ばっかりしてくる」
「してねぇ。俺は親切心で寝そうなお前を起こしてやってるんだ」
「それが邪魔っていうんだよ」
「立派な親切心だろ」
「人の邪魔をすることが親切心だなんて、頭どうかしてるんじゃない?」
「お前が変なタイミングで寝始めるのが悪いんだろうが。今だってそうだろ」
だんだん言い合いになってきてる。
止めたほうがいいのか。
「人間は欲望に忠実。だから俺は睡眠という欲に従ってるだけ」
ああ、確かに人間の3大欲求の中に睡眠欲はあるけども。
「は?」
「睡眠を取ることで脳を休ませてる」
「それにしてもお前は寝すぎなんだよ」
「そんなことない。休ませる時間は人それぞれ」
「意味わかんねぇ」
「はいはい、そこまで!」
そこでようやく透の仲裁が入る。
「これじゃ埒があかないね。あ、じゃあ今からやるゲームで対決でもしたら?勝った方が負けた方の申し出を聞く、ってことで」
「やってやる」
「勝てばこれからはもう真に邪魔されずに済む……」
二人ともやる気のようだ。
私は………
「頑張れ」
一言、それだけいって見守ることにした。
「じゃあ、レースゲーム3本勝負でいくよ」
夕も楽しそうに家庭用ゲーム機機にディスクをセットした。
「絶対負けないから」
「お前に勝つ」


