「よし、完成。優那ちゃん、夕と蒼空呼んできてくれる?」
「分かった」
「いや、俺が呼んでくる。優那に行かせると危険だ」
「あー、あの二人は何をしでかすかわかったもんじゃないからね。特に夕の部屋は……うん、危険だ」
真はテレビの電源を切りソファから立ち上がった。
しばらくすると……
「うわっ!いってーな。なんだよこれ!おい、夕!」
2階の部屋からバタンという音と真の声が聞こえる。
何があったんだろ。
「また真が引っかかってるんだけど。あははっ」
「もし俺じゃなくて優那だったなら……」
「大丈夫大丈夫、ちゃんと入ってくる前に確かめるから。真は僕の返事も無しに入ってきたからこうなったんだよー」
「あ、おい、逃げるんじゃねえ!」
「へっへーん」
タッタッタッと足音が近づいてきた。
「優那ちゃーん!真が怒る~!ぎゅー」
リビングに入ってきて一直線に私に飛びつく。
わざとらしく。
「夕、何したの?」
「真が僕の許可なく部屋に入ってきたからトラップに引っかかっちゃって……」
「トラップって?」
「僕の部屋、そこらじゅうに仕掛けがあるんだよ。無断で部屋に入ると上からタライが落ちてくるとか」
それは痛そう……。
これ、どっちが悪いとも悪くないとも言えない。
尚更私が行かなくてよかったのかもしれない。
「でも安心して?ちゃんと優那ちゃんだって言ってくれればその時は外しておくから」
「う、うん」
もし夕の部屋に行くことがあったらその時は気を付けよう。
「ねえ、二人ともなにしてるの?」
蒼空は、私に抱きつく夕をじっと見つめた。
「あ、蒼空。おはよう?」
今起きたのかな。
朝ご飯の時いなかったし。
「仲が良いね……」
ふいっと首を逸らし椅子に座ってしまった。
「あー、もしかして蒼空ヤキモチ?」
「なにそれ。焼き餅って美味しいの?」
「いやいや、そっちじゃないそっちじゃない」
「いってー。透、冷やすもんねえか?」
真は恐らくタライでぶつけたであろう頭を手で押さえていた。
「あぁ、はいはい」
「サンキュ」
「じゃあいただきます」
全員が揃うと、透特製のトマトパスタを目の前に手を合わせた。
一口食べると、冷えたトマトとパスタが相性抜群で頬が緩む。
つくづく透は料理の天才だと思った。


