「優那ちゃん、ちょっと手伝ってくれない?」
昼食の時間。
「うん。」
キッチンに立つ透の隣に立つ。
「そこのトマト切ってもらえるかな」
白いまな板の横に、新鮮なトマトが3つ。
「分かった。これってサラダ用?」
「ううん、パスタに使おうと思って」
「透って和食も中華もイタリアンも、何でも作れちゃうんだね」
「そんなことないよ。俺、スイーツ系だけは苦手なんだ。というか、あんまり作ったことないからかな」
きっと一度出来てしまえばスイーツだって作れちゃうんだろうな。
「なら、透が苦手なことってなに?」
「苦手なことね〜。んー、女の子……かな」
意外だ。
女の子の扱いには慣れてそうなのに。
「なら、私も女の子だよ。平気なの?」
「確かに……。でもなんでかな、優那ちゃんは平気なんだよね」
「それって、私を女の子として見てないってこと?」
「いや、優那ちゃんのことちゃんとした女の子だって認識してるよ。
ただ、昔会った女の子に似てる気がしてさ。
その子とは仲が良かったから、その時の慣れみたいなのがあるみたい。なんでだろうね」
「それじゃあ私は透からみたらその子っていう認識なの?」
違う人に重ねて見られているようで私はムスッと顔をしかめた。
「あ、ごめん。優那ちゃんは優那ちゃんだよ。そこはちゃんと区別つけつてるから安心して」
「ならいいけど」
「優那ちゃんって、可愛いよね」
「へ?…………痛っ」
透が変なことを言うものだから、包丁で指を切ってしまった。
人差し指からは止めどなく赤い血が流れる。
い、痛い……
「優那ちゃん、大丈夫!?ほら、早く指っ」
透は私の手を取ると、切った人差し指を自分の口に含ませた。
「と、透………?」
「ん?」
俺何か間違えたかな?
って顔してる。
「………恥ずかしい」
指から伝わる透の口内の温度、舌の感触。
「ごめん。応急処置、的な………?」
「………絆創膏貼ってくる」
「救急箱はリビングの棚のところにあるよ」


