私がここへやって来てから1か月が過ぎたある休日のこと。
「優那ちゃん宛てに荷物が届いてるよ。優那ちゃんのお母さんからみたいだけど」
透が抱えるのは大きな段ボール。
「お母さんから?」
「仕送りかな。それにしても随分と重たいね」
「なんだろ」
私は早速その段ボールを開けた。
「うわあ、おいしそうな野菜だね」
中には、新鮮な野菜がどっさりと詰められていた。
「何々~?」
「あ、夕」
「何開けてんのー」
「お母さんから届いた荷物」
「うっわ、野菜いっぱいだね」
「トウモロコシ、そらまめ、ゴーヤ、きゅうり、キャベツ、ごぼう、あとピーマン」
「げ、ピーマン……」
「よーし、夕のためにピーマンの肉詰めでも作ってあげようか」
「と、透!?それ本気?僕がピーマン嫌いなの知ってるよね!?」
「夕の好き嫌いをなくすいい機会だと思うんだけどな」
透が黒い。
笑みが黒い。
「透なんて大嫌いだー!」
夕は、小さい子供のように駄々をこね続けた。
「ったく、うるせーな。なに騒いでんだよ」
夕があまりにも騒ぐもんだから、真が部屋から出てきた。
とても不機嫌そうな顔だ。
「透が夕にピーマンを食べさせようと言う話」
騒いでいる夕の代わりに私が説明する。
「なんだ、そんなことかよ」
「酷いと思わない!?思うよね!?」
「いや、未だにピーマンが食べられないお前が悪い」
「真まで僕の敵にまわるんだー!」
夕が騒いでいる間、私は段ボールの中を漁っていた。
野菜のほかにも梅干しとか漬物とか……まさに田舎って言う感じのものがたくさん。
「これ……」
「どうかした?」
「透、これ手紙だよね?」
「うん、そうだね」
野菜の隙間に埋もれていた、うすピンクの和紙の封筒。
綺麗なお母さんの文字で”優那へ”と書いてあった。
私はすぐにその場で手紙を封筒から取り出した。
優那へ
寮生活はどうですか?元気にやっていますか?
寮では自炊だと聞いたので、おじいちゃんの庭でとれた野菜を沢山入れておきました。美味しく調理して食べてね。
ちなみに、私たちは毎日楽しく過ごしています。
おじいちゃんもビンビンしていて元気です。私たちが心配する必要なかったみたい。
でも、このまま帰るのもあれなので、しばらくはこっちでのんびりライフを過ごしたいと思いまーす。あ、お父さんは仕事があるから一人寂しく戻るみたいだけどねっ。
ってことで、優那も風邪には気を付けて頑張ってくださいね。
優那に言い忘れてたことがあるの。
あなた、幼い頃の記憶がないじゃない?身体に異常があるわけでもないし、あなたはそれでいいって言ってはいるけれど、お母さんはちゃんと思い出して欲しいと思ってるの。
大切な思い出だもの。忘れていてはダメよ。
確か、一人の男の子ととーっても大切な約束をしたんだって話してくれたことがあったのよ。
知り合いによるとその学園にヒントがあるとかないとか……。
母より


