「いってきまーすっ!」
「行ってきます」
「ふあ~」
「真が、ネクタイしてる!?俺がつけなさいって言っても付けなかったのに……!」
「うるせーな。いいだろ、別に。今日はたまたまそーゆー気分なんだよ」
皆揃って寮を出ると、すぐさま注目の的となる。
それは……。
「珍しく真君がネクタイしてる~。超似合ってる~!」
本当はつけたくないと思いますよ。
「蒼空君ったらまた寝ながら歩いてるぅ。でもそんなところも可愛い」
いつものことです。
「夕くーん、この飴いる!?」
「ん?あぁ、ありがとっ。あ、これ食べてみたかったんだよね」
「きゃー、目が合っちゃった」
飴が目当てです。
「透先輩はいつにも増してキラキラしてる。いいことでもあったのかしら」
それは真がネクタイをしていることに感激しているからです。
「それにしてもあの子羨ましい~。どうやってあの特別寮に入ったのよ」
「ちょっとくっつきすぎじゃない?」
「わざわざ一緒に登校しなくたって良いじゃない」
ほら、こうなる。
「ゆーな」
「わっ」
後ろから首に腕をからませてくる蒼空。
「大丈夫?」
「大丈夫だから」
「ならいいけど」
「二人とも、朝からいちゃつかないでよねー!」
「何?夕、嫉妬?」
蒼空が夕にそう告げる。
嫉妬って……
「ぶーぶー。ちょっと前まではいつも僕に着いてきてたくせに。今じゃいっつも優那ちゃんだもんね、蒼空は」
「だってこの高さ丁度いいから。抱き枕みたいな感じで」
「ずーるーいー。なら僕も、ぎゅー!」
「わわっ」
今度は夕まで抱きついてきた。
「あ、でも確かにいいかも」
「夕、離して。俺の」
「いーやーだー。僕も気にいっちゃったもんね。」
「うぅ、苦しい」
そして周囲の視線が明らかにギラついている。
「お前ら、いい加減にしろ!……っと、大丈夫かよ」
板挟み状態であった私を救いだしたのは真だった。
助かった。
危うく息の根を止められる……とまでは行かないけど苦しかった。
「ありがとう」
「別に。あのままだと遅刻しちまうと思ったからなんだからな?」
「なら置いていけばよかったのに。真って優しいんだね」
「うるせ」
ちなみにその後、私は真の荷物持ちやらなんやらとこき使われた1週間となったのであった。
優しいと言ったのを撤回したい……。


