「うわぁ、次移動教室じゃん。しかも音楽……」
授業合間、夕が私の机に顎を乗せながらそう言う。
「音楽嫌いなの?」
「教科としては嫌いじゃないけどさ、あの先生怖いんだもん。バレないように飴舐めててもすぐにみつかって、ガミガミ怒るし……」
「なら食べなきゃいいのに」
そうすれば、ガミガミ言われずに済むのに。
「そうなんだけどさぁ、身体が糖分を欲してるんだよ。わかる?」
「わからない」
「ぶー、ぶー」
「それより早く行かないと」
「しょうがないなぁ、優那ちゃんが行くなら僕も行くー。ほら、蒼空も行くよ」
「うん」
ちゃんと起きてる。
「ゆ、優那ちゃん。蒼空が………蒼空が寝てない……」
「夕、俺をなんだと思ってるの?」
「年中冬眠人間」
年中なら今は春だし、冬眠とは言わないと思うけど。
「起きてる時は起きてるから。ほら行くよ」
スタスタと先を歩く蒼空。
「それにしてもキレが良い。頭のネジ締まったのかな」
夕が驚く程って。
「まさか………それはないか」
朝のことが原因かな、なんて思ったけど、多分違うよね。


