どうやら私の初めてのキスとやらは、目の前の寝ぼけた人に奪われたらしい。
「ん……………ってちょ!」
「………あれ、優那?」
あれ、優那?じゃない
「あーあ、やっちゃった。まさか本当にしちゃうとは……な」
「真、嘘なの?」
半信半疑ではあったけど。
「嘘だってさっき言ったけど?聞いてなかったのはお前だろ」
「本当かどうか疑って、寸止めで終わらせようと思ったのに……」
まさかこんな事態になるだなんて。
「蒼空、ごめんね」
「優那の唇、柔らかかった。俺初めてだったけど、優那だったから良かった」
「へ?」
「蒼空、お前直球過ぎだろ」
「でも、今のは俺が起き上がったのが悪かった。ごめんね。俺は良くても優那は嫌だったでしょ?今のは事故だよ、だからノーカウントにできるよ」
蒼空がこんなに長く喋るのを初めて聞いた。
「うん、分かった。蒼空がそれでいいならなかったことにしよう」
本当は嫌ではなかったし、ノーカウントにするのは私の心が許さない。
「優那ちゃーん、蒼空起きた?って、何かあった!?優那ちゃん顔真っ赤だよっ。もしかして、蒼空になにかされたんじゃ____」
そのとき、心配した夕がやって来た。
「ううん、何も無い。蒼空もちゃんと起きたから今行く」
「そう?ならいいけど。蒼空、本当に何もしてないよね?」
「ノーカウント、だから」
蒼空を見ると、フワッとした笑顔を見せた。
少しドキッとしたのは事故のせいだ。
初めての相手が蒼空で良かったのかもしれない。
なんて思った。


