5月中旬。特別暑い日ではない。だが、真の額には多くの汗が出ていた。そして、真は地元の商店街を歩いていていた。それにしても今日の商店街は静かだった。
「確かにここのはずなんだがな。それに今になっても信じられないな。」
先日のような夢を見ても未だに半信半疑の真。
「それにしても夢の中の人が自分自身だから誰に起きるかわからねぇな。」
確かに、夢では自分自身に起きているため夢の出来事が誰に起きるかわからない。ましてや、初陣の真に関しては全くわからない。ただそんな甘いことは言っていられない。しかし、周りを見ることしかできない。

「おらっ!どけっ!!」
鞄を持った男性が真の背中にぶつかりながら走っていった。真は、つまずいたように転んだが、思った。
「きた!!これだ!!」
真は、急いで男性を追いかけた。予想以上に男性の走りが遅く、意外と早く捕まえた。
「おい、お前窃盗してるだろ。」
「なんでわかるんだ!?」
「いいから、盗んだの返せ。」
真は初仕事にも関わらず、意外と手際がよかった。
「ちっ!おらよ!」
男性は素直に盗んだ物を真に渡した。盗んだ物は、コンビニで万引きした成人向け雑誌と日本酒の小瓶が3つだった。
「たかがこんだけのために万引きかよ。追っただけ損した気分だ。」
「くそっ、さっき話しかけてきたやつがGメンだと思って逃げたのが間違いだったか。」
男性は、コンビニを出てすぐ女性に話しかけられて、それがGメンだと思い、逃げたところを真に捕まったのだった。
「おっさんも、反省してるならコンビニ戻って謝ってきな。」
真はそう言い男性を連れていこうとした瞬間、男性は真の腕を払い、再度逃走した。今度は盗んだ荷物を置いていった。そのため、先程よりも早く走れて、すぐ商店街を抜けて大通りに出た。真も商店街を抜けて、すぐ追い付くと思った。だが、先の方を見ると青信号が点滅していた。それに、男性はもうすでに道を渡ってしまっていた。真は全力で走り追いかけたが10m先ぐらいで赤信号に変わってしまった。そして車が走り出し、もう男性はどこかに行ってしまっていた。

真は商品を手に取り、商店街の中にある唯一のコンビニに返した。この時、真が疑われたことはもちろん当たり前である。だが真は万引きを止めたと喜びの心境だった。そして、その日の夜は疲れが一気にきてよく寝てしまった。

だがまだ仕事は終わらない。

第二章 初陣 完