そんな私が彼に会ったのは、自分の職場。
 私は看護師で、彼は患者だった。



「では、恵藤さんお熱計ってくださいね。体温計。」



 白いベッドに横たわる彼は、患者さんの一人にしか過ぎなかったし、私は彼がアイドルだなんてことにも気付かなかった。
 カッコよくて、スタイルのいい人だなぁ、とは思った。きっとモテるんだろうな、とも思った。でも、まさか、日本中が知っている恵藤昴が目の前に寝ているなんて思いもしない。しかも、虫垂炎、いわゆる盲腸の患者さんだった。



「恵藤さん、少し熱がありますね。念のために、すぐ先生に来てもらいますね。」
「なぁ、あんた、俺見ても態度変えねぇなんて、対したプロだな。」
「はい?」
「いや、なんつーか、自意識過剰みてーで言いにくいんだが、俺のこと知らないのか?」
「はぁ?恵藤さんですよね。」



 私がそう言うと、彼はベットに張り付けてるネームプレートを指さした。
 そこには、「恵藤昴」と記されていた。