もう一度君を  この腕に

「俺は君の泳ぎも潜りも見たことがない。」

「専務に嫉妬してるの?」

俺はシャクに障ったが何も言い返さずに

頭を横に振って彼女の目を見つめた。

「俺はビジネスに関しては容赦しないからな。」

「私もビジネスに関しては妥協しないわ。」

「で、今は何をしてるんだ?仕事は?」

「ライターなの。」

「ライター?フリーか?」

「そ。潜りのね。」

「俺がダイバーのライセンスを取らせたかったのにな。」

彼女は俺がボソリと吐いた言葉にまた笑った。

「記事はいくつか書いてるし、写真の腕もまあまあだと思うけど、気付かなかった?」

「俺はこの4年日本にいなかった。」

「それ、本当?」

「君に対してもう嘘は言わない。」

彼女は俺ににっこりと笑顔を向けた。