もう一度君を  この腕に

「ところで、彼は変わりない?」

俺が聞いたのは最後に伊豆で会った時の彼だ。

彼女の返事がないので俺は続けて言った。

「ショップのオーナーだと聞いたよ。うちとも取り引きがあることも。」

「彼とは別れたの。」

「別れた?」

俺は驚きを隠せなかった。

「ええ。」

俺はどうしてと言いかけて口を閉じた。

ヤツは俺よりも遥かに大人で

彼女を気遣えて包容力のある男だった。

俺はそう思っていた。

違うのだろうか。

「彼は私を理解してくれたの。その結果私は彼に捨てられた。」

「捨てられた?」

俺は怪訝に思った。

「そういうこと。」

「どうして?理解してくれていたなら捨てるはずないだろ?」

「現にそうなんですもの。仕方がないわ。」

「君は納得したのか?それで良かったのか?」

「ええ。」

「俺には理解できないな」

「単純なことなの。」

「どう単純かもわからないよ。」