「先輩、私が死んでも、気が付いてくださいね」

彼女は今にも泣きそうな顔をくしゃっとさせて、俺に笑いかけた。

それが今の彼女の精一杯の笑顔なんだと思った。

「気が付くに決まってるだろ!お前がいなくなったら、世界中のだれよりも先に…俺は、俺は、気が付いたよ」

次の瞬間、シャンプーの甘い香りと共に彼女の顔が近づいて、唇が触れた。

感触はなかったけれど、先週感じたのと同じ、酔いしれるようなぼうっとした感覚で、彼女とキスを交わしたのだと分かった。

「よかった」

そう言って微笑むと、彼女の姿は水蒸気のように消えた。