「私、帰ります」 「帰る?どこに?」 「………」 俺は雫ちゃん目線になるためにしゃがんで、優しく尋ねるが、雫ちゃんは辛そうに目を伏せる。 ……やっぱり、帰るところがないんだ。 理由なんてわからない。 虐待、離婚、家出……予想はいくつも浮かぶけど。 雫ちゃんの“帰るところがない”理由は、俺の頭に浮かんでいる予想の遥か上にありそうで仕方ない。 「大丈夫だから」 「……っ」 「迷惑なんかじゃないよ」 だから、そんな辛そうな表情をしないでくれ。