「さすがにまずいだろ…。誘拐だぞ、それ」 自分の後頭部に手を回して、顔を歪ませて話す真汰。 彼なりに心配しているようだ。 「……あ、の」 ここで、家に来てから初めて、雫ちゃんが声を発した。 その声は震えていて、弱々しかった。 「ごめんなさい」 突然の謝罪に、俺と真汰は動揺した。 なんで謝るんだ? 謝るようなこと、してないじゃないか。 不安に似た気持ちが、心を支配した。