「この子、なんだけど……」
俺は、ずっと扉に隠れていた雫ちゃんを俺の前に来させた。
雫は恥ずかしいのか、顔を俯かせている。
「誰、そいつ」
口調がやや喧嘩腰できついのは、真汰の生まれつきの癖。
その言い方直せよ、といくら言っても直らない。
雫は真汰の口調に、唇を噛み締めた。
俺は「大丈夫」と小声で囁き、雫ちゃんの小さな肩をポンポンと優しく叩く。
「拾ったんだ」
まるで捨て猫でも連れてきたかのように、俺はさらっと平然とした顔で言った。
平気な顔して言わないと、内心、動揺してることがバレてしまう。
真汰にも、……雫ちゃんにも。



