雫ちゃんの手を引いて、俺は家へと戻った。
本当は王雷【オウライ】のたまり場となっている、双雷【ソウライ】の洋館の隣にある倉庫に行こうか迷ったのだが、
今は雫ちゃんを家に連れて行くのが優先だ。
「――ただいま」
4年前に建てたばかりの自分の家の扉を開け、そう大きな声で言う。
「なんで今日、こんなに速ぇんだよ」
返ってきたのは、「おかえり」ではなく質問。
質問をしたのは、俺の弟の素野 真汰【ソノ シンタ】。真汰は双雷に属している。
俺と真汰は、この家で二人暮らし中。
両親が亡くなったとかそういうのではなく、父さんが海外に仕事で出張していて、母さんが父さんについていったから、二人暮らし中なのだ。
「ちょっと帰る用事ができちゃってね」
「用事?」
既に170センチある中学1年の真汰は、鋭いこげ茶の目をこちらに向ける。