「兄貴」
夕食を食べ終えて、真汰が俺に声をかけてきた。
雫は洗い物をしていて、俺たちのいるリビングから離れ、キッチンにいる。
水の音が邪魔をして、真汰の声を耳に届けにくくする。
「どうした?真汰」
真汰の顔つきがいつになく真剣なものだったので、俺は首をかしげた。
「早く雫を救ってあげねぇと、このままじゃ雫が壊れるぞ」
「っ、」
「いつか、心を閉ざすぞ。どうすんだ。
俺はもう――覚悟は出来たぞ」
時間が経てば経つほど、関係は変わっていく。
いつの間にか、真汰には覚悟が出来ていた。
俺にはできていない、覚悟が。



