獣★愛SS~最強ケダモノ男子の特別視線~





真汰は俺にしか聞こえないくらいの声で呟き、そのまま二階へ上がっていった。



真汰は悟ったのだろう。

さっきの雫ちゃんの姿で、少女が抱えているものに。





そりゃ、すぐには無理だ。


俺だって、今は覚悟のかけらもない。


雫ちゃんだって、自分のことを話す勇気なんてまだないだろう。




けれど、いつかは………。






俺はギュッと自分の手を握り締めた。


爪痕が残るくらい、強く。






「うん、よろしく。俺のことは博でいいから」



少し遅くなってしまった返事を、俺は笑顔を向けて言った。


雫ちゃんは、ぎこちなく微笑んだ。






それは、初めて雫ちゃんが見せてくれた笑顔だった。






たとえそれが作り笑顔だとしても、嬉しかった。


少しだけ心を開いてくれた気がして。