「雫ちゃん」
俺は雫ちゃんの肩を優しく掴む。
「今日から、ココを自分の家だと思っていいからね」
せめて、少女の辛い気持ちを減らしてあげたくて、少女に帰る場所を与えたくて、
……笑顔になってほしくて、俺は――。
「あ、ありがとう……」
雫ちゃんの声は、か細くて、今にも泣きそうなくらいで。
だけど、雫ちゃんの表情にあった苦しみが、少しだけ和らいだ気がした。
気のせいだったとしても
嬉しかったんだ。
その時の俺は、雫ちゃんのことなんて何も知らなかったけど
それでも思っていたんだ。
少女の幸せを、ただひたすらに。



