少しずつ窓側に寄ってみる。 もう、春馬の財布を取りに来たことなんか忘れてしまっていた。 あと1mというとこまで来て、ようやく気付いた。 伊藤の肩が、震えていることに。 「…なんかあった?」 その場で足を止め、できるだけ柔らかく尋ねる。 そこで、ゆっくりと伊藤が振り返った。