「初めまして、高城さん。
森山由貴です。
恩田さんは、直属の上司なんです。
それにしても、すごい。
うわ~っ。なんて、男前なの?
すみません…ちょっと、
写真撮っていいですか?」
「写真?」ナオの表情がくもる。
面倒くさいって、思ってるよ。
「ねぇ…由貴ちゃん、それやめよっか…」
ナオの一番嫌いなやつだ。
由貴ちゃんは、バッグから携帯を出し、
すでにナオにカメラを向けている。
が、ナオは、嫌がる様子もなく、
「撮るなら、ちょっと待って」
と言うと、私の肩をぐいっと引いて、
私を腕の中におさめた。
さっさと自分だけ、私の頭の上で
写真をとるポーズを撮っている。
「ちょっと、何で私まで、いいってば」
「先輩、一人だけ、
不細工な顔止めて下さいね」
「せっかくだから、私も入ろう」
由貴ちゃんは、
調子よく隣のテーブルの若い男の子に、
写真を撮ってもらった。
写真を撮っている間、
ナオの腕は私の体をずっと、とらえていた。
「由貴ちゃんは、何が好き?」
男性の好みですかあ?
なんて
冗談言いながら、
もうナオに馴染んでいる。
「大人の店がいいです。
普段行けないような」
「いいよ。料理は?特に好き嫌いない?」
「はあ~い」
ナオは、電話をかけて店の人と話をすると、
「席空けてもらえたから、
タクシーで移動しよう」
「さすが、洗練されてる」
「そりゃ、ナオは、
学生の頃からこんなことしてるもの」


