私は、後になって、ナオに聞いてみた。

『ナオ、どうして、あの子駄目だったの?』


『えっ?ああ、あの読者モデルの子?
さあ…付き合ってって言われたから、
そうしただけで、

友達にも会うなとか、
もっと時間を作れとか面倒だし。

だったら、春や朱音がいるから、
いいやと思って』




『ナオったら、相手にそんなこと、
言っちゃったの?』


『隠したって仕方ないだろ?』


『ナオ、それじゃ彼女が可哀想だよ』


『そうかな。
ずっと、気持ちに嘘をついて、
付き合いを長引かす方が、可哀想だろ?』


その時は、私なら嘘でもいいから、
そばにいて欲しいと思うのに、
とナオのことを薄情だと思った。


私が、ナオの近くにいられるのは、
彼を縛らない友達でいるからだ。



私は、ナオにもう1度電話して、
たいした用事じゃなかったから、
気にしないでと伝えた。


電話には、出なかったから、
留守電に入れておいた。


ナオは、私に取ってかけがえのない人だ。

ナオは、私を理解してくれない、
母親の存在よりナオは、
大きな存在なのだ。


母には、会わずに居られるけれど、
ナオと会わずに居られる自信はない。

多分、私は、
ナオとの関係を続けようとするだろう。
どんなことをしてでも。


きっと、どこまでも、
ナオの言う事を聞いて、
彼の機嫌を取ろうとするだろう。


ナオとの 恋愛がこじれて、
お互い、傷つけあうような
ことになったら、
ナオとの関係が崩れてしまう。


逃げ場を作らなければならない。

だから、恋愛なんか、すべきじゃない。

そうすることは、
何年も前から決めてたのに。

明日は、久俊さんと話をしよう。

彼こそ、私のことを理解して、
それでもいいと言ってくれる。
久俊さんは、私の目の前の現実にいる人だ。

夢の中にいる人ではない。