二人が一緒になるために。
離れたくない、
という思いを通すために。



ナオは、私に、久俊さんへ、きちんと説得をするようにと命じた。



自分は、生涯のパートナーに
私を選ぶと、家族に宣言するからと。

どちらも、私達が
越えなければならない課題だ。


相変わらず、煮えきらない私は、
さんざんナオをやきもきさせて、
最後はナオが自ら説明に行く、
とまで言われてようやく重い腰を上げた。



なのに、久俊さんはあっけなく、

「あっ、そう」と言っただけだった。

「あの…」
それだけ?

久俊さんは、笑って、
「俺だってバカじゃないよ。
こんなことが続くなんて、
思ってなかったさ。
まあ、運がよければ、
遅らせることくらいは、
出来るかなあって思ったけど」

と、相変わらずクールにおっしゃった。


「春?それより、
仕事面では覚悟してる?
このところ上の空で、
身が入ってなかったみたいだけど。

だいぶ作業が遅れてるから、
開発の作業にもプログラマーとして、
ヘルプで入ってね?
とても、新婚気分は味わえないけど。
これ、俺からの餞別ね」


久俊さんは、嬉しそうに言う。

「はい。がんばります」