「そんな…
そんなはずないよ。
あんなに周りに女の子がいて、
その中で私だなんて…」


ナオは、大きく口を開けて笑った。



「俺は、君よりもっと認めたくなかったよ。
こんなに一人の女に影響を受けて、
振り回されて、会うたびにイラついて。

でも、君が、俺以外の誰かを選んで、
遠くに行くかもしれないって聞いて、
どうしていいのかわからなくなった。

やっと気づいたんだ。
いくら強い絆があっても、
見てるだけじゃダメなんだって。

最初は、何にも出来なかったけど。
君が居なくなったらどうしようって、
焦るだけで、何一つうまく行かないし」



「そうだったの…」



「なあ、春?わかっただろう?
あの時だって、いくら俺でも、
どうでもいい奴に、大金渡すと思うか?

一応、俺だってあの金は、
車を買い換えるための金で、
前からバイトしたり、苦労して貯めたんだ。

金を渡すに迷いはなかった。
大学をやめたら、
もう会えなくなると思ったから。

好きで、君の家のトラブルに
進んで飛び込んだと思うかい?
そんなわけないだろ!
みんな君が好きだったからだよ」