今まで、朱音の暖かい眼差し、
柔らかい指の感覚を、
何も考えずに受け取って来た。


朱音の本当の気持ちを、
知ってしまった。
けど、それを受けとることては出来ない。


朱音は、受け入れられないって
わかってたはず。


「大丈夫か?」
ナオが、こっちを向いて私に声をかけた。


「ええ」

顔が強張っていた。

全然平気に見えたかもしれないが、

これでも、足は震えてるし、
朱音にどう対処したらいいのか
わからなくなっていた。



こんなことがあっても、
朱音との
友情に変わりない。

でも、朱音はそうじゃないかもしれない。

朱音は、この先どうしたいの?



私は、見当も付かずに、うろたえていた。


「ナオ、私、帰ったほうがいいよね」


「ええっ?帰るの?」

朱音は、震えているし、
落ち着くまで、誰かが
そばにいた方がいい。


ナオに、一緒に居て、そう言われたけど、
朱音は、私がいると、
ナオに話ができないだろうと思う。

「うん。今日は朱音についててあげてよ」
多分、今は、
朱音の方が苦しい思いをしているはず。


「ああ、そっか。そうだね」


「今日はありがとう。それじゃあ」


もっと適当な言葉を探したけれど、
思い浮かばなかった。



もう、とっくに私の思いは、
行き場をなくしてる。


もし、ナオが朱音を置いて、
私を探しに来ても、
私も、ナオの手を、素直に受け取ることは、
できなかっただろう。



現実は、動き出してしまってるし、
感情のままに行動したら、
また、別の人を傷つける。


やっぱり、ナオ、
あなたが必要としてるのは、私じゃないよ。



いつも、真っ先に走って行くのは、
朱音の所だし、
心配なのも、朱音のことなんだ。