「春は、高城のこと、どう思ってる?」


「大切な人…」


「春が一番信頼してる人物は?
高城なんだろう?」

私は、うなずいた。


「親とか兄弟より?」


「うん」


身内で信頼できたのは、
亡くなった祖父母だけだ。


だから、
生きて話が出来るのは、ナオだけだ。


「そんなやつを恋愛の相手に選んだら、
どうなる?
そいつに嫌われまいとして、
全面的にそいつの要求を、
全て受け入れるしかないだろう?」


「久俊さん…」


「君は、高城のやることを、
見てるしかないんだ。

やつが君を裏切っても、無視しても、
高城のやることを、
黙って見てるしかないんだ。

嫌われたら、
この世で一番大切な人間を失うからね。
そんなの無理だろう?」


「そんなことわかってるよ。
そんなことなら、何でもない。傷つきもしないよ!」


久俊さんは、ふうっと息を吐いた。


「じゃあ、何だ?そんなに動揺してるのは…」


「ナオは…ずっと朱音が好きだった。
多分、今でも…」


「おい、何だよ、それ。冗談言ってるのか?」


「違うよ。本気で言ってる」


「聞いた話ばかりだから、
わからないけど、どうしたら、そうなるんだ?」


私は、ナオが朱音に片思いしてたこと、
最近朱音とずっと一緒だってことを話した。



「なあ、それ本当なのか?俺には、信じられないけど」



「毎日会いたい相手なんて、そういるわけじゃない」


「そんで、お前は納得したのか?
2ヶ月って言ったよな、俺」


久俊さんは、優しく笑う。


「うん」
ナオの気持ちが朱音にあるなら、
私はもう、納得するしかない。


「引きずるのも、そこまでだよ。
春妃には、期限が必要だよ。
期限が過ぎたら、さっぱりあきらめろ。
そういう約束だったでろう?」


「久俊さん、そんなに急に言われても…」


「俺は、大きな賭けをしたんだ。
君もそれに乗ったんだろう?
逃げ出すなんて許さないよ」