グラスを傾け、笑いかけてくる、
きれいな横顔を眺める。

朱音は、どこから見ても完璧で、
凛とした美しさがある。


今でもきれいだと思う。

けど、思いは重ならなかった。




朱音は、自分の感情を二の次にして、
春妃の事を大切にしてくれる。

そんな朱音の思いを、
邪魔にすることはしない。



「元カレ、春妃のことあきらめたの?」


「いや。この間、春に連絡取ってた。
もうすぐこっちに戻ってくる」


「二人に問題が無ければ、
心配することないわ」


「ああ…そうだね。だといいけど。
この間、かっとなったんだ。
春妃にたいして」


「ヘェー。珍しい…ナオ、嫉妬したの?」


「この頃、ずっとなんだ。
おかしいよな。余裕無くて。
春を見てると、イライラする。
そんなの放っておけよって」


「いいな。あなたたち…羨ましいな」




「だろう?でも、あいつ、俺がイラつくのうれしそうにするんだ。
頭なでてくれたり、キスしてくれたり。

わかったって、そう、にらむな。
全部、俺のだけどな。

あんまり、
のろけないうちに帰るか」



「本当、そうね」


「途中までタクシー、
一緒だろ?送るよ」



「ありがとう」