「春とは、うまく行ってる」


朱音を、店に呼び出して、一緒に飲んでいた。
いつもは、朱音の家で飲む事が多い。


「二人で遊びに来てくれれば、いいのに」
と朱音が言う。


「そのうちな。でも、いいのか?
散々見せつけるぞ」


「最低だね…
でも、春ちゃんがキスされてうっとりしてる顔、かわいいんだよね。
男の方は、見たくないけど」


「気持ち悪いぞ、それ。やっぱ、お前のこと、
うかつに近づけない方がいいな」


「ナオに取り上げる権利なんかないじゃん」


「春妃は俺のものだ。変な目で見たら朱音でも許さない」


「怖いなあ」



「朱音?そういえば、
前に、春妃に洋服買ったり、
靴やバッグ買ったりしてただろ?
あれ、何で、止めたの?」

朱音が懐かしそうに笑う。


「ああ、確かにあの子、素材は、
悪くないのよ。
きれいだし、ちゃんとすると、
見映えが良くなるんだけど、
逆に、余計な虫がたくさん増えるし、
言い寄る男、蹴散らすのに苦労したのよ。
もちろん、全部握りつぶしたけど」


「ひどいじゃないか。
そのせいか、学生の頃、春は、
なかなか、ボーイフレンドや友達が出来ないって
落ちんでたのに」


「いいのよ。あの子の友達は、私だけで。
どうでもいい知り合い何かに、
邪魔されたくなかったから」


「その、どうでもいいやつの中に、
俺も入ってたんだろう?」


「まあね。
何度あんな見てくれだけの男、
相手にするなって言っても、
聞いてくれないし…」


「ひどい、言い方だなあ。
でも、今なら分かるよ。
もう、俺、あいつのこと手放せない」


「あっそう」


「あのさ、ちょっと聞きたいんだけど、
そんな大事なもん、
どうやってあきらめたの?」


「あら?あきらめてなんかいないよ。
独占するのを我慢してるだけで、
どきどき遊びに来て、
寝顔、見てるだけでいいの」


「辛くないの?」


「だって、私は、ナオとは違う。
全部話したら、すべてが終わるから…」


「そっか、辛いな。
俺には、耐えられそうにない」