春が、落ち着いてから、
春が何を気にしているのか、聞き出す。


「まだ、学生の頃、湖のホテルで…」


「あれが、拒否なのか?
俺が、君を拒否した?そんなわけない」


「覚えてないの?」


「覚えてないじゃなくて、
拒否なんかしてないよ」


「だって、
好きって、告白してキスまでしたのに」


「当たり前だろ?
あの時、親父さんの容態がよくなくて、
心身ともに、弱ってる女につけ込めるかよ」


「そんな理由だったの?」


「当たり前だろ?
ああ、そりゃ欲しかったよ。
いずれ、そうなればいいと思ってたし。
っていうか、
君は、俺の気持ちに
まったく気づかなかったの?」


「あなたは、あくまでも
友達として親切にしてくれてたと」


「バカな!
そんなやついるかよ。
三百万も金つぎ込んで、
君の両親のトラブルに首突っ込んで、
得られたものが、
ありがとうって感謝だけだ。

おまけに、君は、
他の男と付き合い始めたんだぞ。
拒絶されたのは、俺の方だろ?」


そうだよ。

春妃のためにしたことが、
逆に春妃を遠ざけてしまったんだ。


「ごめん、ナオ。
そのときはそうは思えなかった。
側にいちゃいけないと思ってた」


「はあ?何でそうなるの」
いったい、どうなってるの?

春がようやく口を開いた。


「お母様に言われたから」


「何ってっていうか…想像つくよ。
家にふさわしくないとかだろ?」


春は頷いた。


「ごめん。もう少し配慮すべきだった。
君ならそう受け止めるって。

でも、お袋が何言ったって、
俺は、自分の考え曲げないから。いい?」


「うん」


「わかったら、早くキスして」