だいたい、春妃は自己評価が低すぎるんだ。
会社で、エレベータに乗り合わせたときに、
お先にって微笑まれるだけで、
男なんて簡単に恋に落ちる。
まして、春のこと、
一生どんなリスクを払っても、
側に置きたいなんて
考えてるやつが、
どんな手段に出るのか
わからないって言うのに。
「連絡なんか取るな、話なんかするな」
「ナオごめん。許して…」
春がキスをしようと顔を近づける。
春の顎を押さえて俺から遠ざける。
「そんなことで、許すかよ」
春は苦しげな表情で俺にすがってくる。
「ごめんなさい。許して、お願い」
懇願する春の表情に欲情する。
どうしようもない俺。
春が、必死にしがみついて来るので、
腹立ち紛れに
反射的に春の体を押し返した。
春は泣いていた。
そんなことで、どうして泣くの?
俺は驚いた。
春妃がその場で凍り付いていた。
「どうした?」
耳をふさぎ
心ここにあらず、春は何かにおびえている。
「お願いだから、二度と拒否しないで」
「拒否?」
「二度も拒否されたら、私もう、
あなたとは一緒に居られない」