私は、横浜駅で降りて、
東京に向う電車に乗った。


ナオと同じ電車だから、
彼に会わないか、辺りを何度も見回す。


何かこう、落ち着かない。
ふわふわした感じが収まらない。

ずっと、地面に足が付いてない
状態で歩いているみたい。


ナオ、どうしたんだろう。
私なんかを…相手にするなんて。


よっぽど、
ショックなことでもあったのかな。


だったら、拒否したら悪かったかな。


でも、拒否しなかったら、
絶対キス以上、行ってた。

キス以上って…

どうするのよ。今度ナオに会ったら…



知らん顔するの?

何もなかったように? 


この間は、どうも、なんて言うの?


無理だ、それ。

ナオの体に、
半径3メートル以内に近づいたら、
心臓が跳ね上がるもの。


どうして、こんなことしたのよ。

こんなの、やりにくくて仕方がない。


改札を出て、朱音のマンションに向かう。

途中のコンビニで、
つまみとデザートを買った。



「どうぞ」

といつも通り、朱音が迎え入れてくれる。
少し、ほっとする。



朱音の部屋に着くと、
朱音は、すでに化粧を落とし
部屋着に着替えて、くつろいでいた。


部屋の中にほんのり、
朱音が吸ってるタバコの匂いがする。


照明を押さえ目にした、
リラックスできる明るさに調整されている。

「ごめん、寝るところだった?」


「違うよ。たまたま今日は、
早く帰ってきただけ」


朱音の部屋は
駅の近く、とてもいい場所にある。


朱音は学生の頃から、親元を出て、
このマンションで一人暮らしを始めた。