「あれ?春は?」
「お手洗いじゃない?」
彩夏が、そう答えたけど、
友達の方は、
彩夏の返事を聞いて驚いている。
何かあったなと思った。
「荷物は?買い物袋たくさん持ってただろ?」
「彩夏、もうやめようよ。
良くないよ。高城さんに余計に嫌われるよ」
「何であんな子といるのよ。
あんな、いやしい家の娘」
「おい、お前、春に何した?」
すぐに電話しても、春は出なかった。
「お前、春になに言ったんだ?
くそっ、電話に出ない。
許さない、春を傷つけたら。
悪いけど、もう、俺の前に顔見せるな」
相当腹が立っていたから、
すごい形相でにらんだんだと思う。
彩夏の友達が、驚いてフォローした。
「高城君?
春ちゃん探しに行ってあげて。
まだそんなに、遠くに行ってないはずだから」
彩夏の友達の方は、常識的だ。
「ああ、わかった…」
「待ってよ!私の事は、
どうでもいいっていうの?」
彩夏が立ち上がる。
「悪いけど、今俺にとって、
大切なの、春だけだから」
店を出て、商業施設に入ると、
休日の人込みで、
春を見つける事なんか無理だと思う。
でも、見つけなきゃ。
たとえ、一晩中かかっても。
春を一人にはしておきたくない。