「まあ、そんなに難しく考えなくても」
朱音は、普段と変わりない。ほっとする。



「どのくらい、もつのかな…」
声に出すつもりじゃなかったのに、
口から漏れてしまった。



「あ~あ、どうしたの?
付き合い始めのカップルのくせに、
ずいぶん悲観的だね」
朱音が釘をさす。

「うん。ナオは、
いつまで私に飽きずにいられるのかな」


「驚いた。何? あなたたち、
付き合いだしたばかりでしょ?」


「ナオの恋愛の、
多くのケースが半年だと思うと、
もう一ヶ月は過ぎてるの」


「半年で飽きるとは思えないけど」


「う~ん。ナオの気持ちは、
変らないかもしれない。
でも、彼の周りには、
自分こそ、彼にふさわしいと思って、
私を押しのけようとする人がたくさんいる」

「そんなの、わかってたことじゃないの。
あいつの外見、見て寄って来る、
虫みたいなもん、相手にしなければいいの。
それより、元彼は?
さっぱり、あきらめてくれたの?」

「久俊さんは…
ナオと、ちゃんと恋愛してこいって言うの」

「何それ」


「春ちゃん、また、振り回され…
あのね、ナオと分かれたとしても、
別の人と付き合うのは、
別次元の話でしょう?

なんで、相手の暗示になんか、
掛かってるのよ。

まあ、さすがだね。
春を動かすには、賢いやり方だね。
ナオ相手じゃあ、
まともに行っても、勝てないもんね」



「私が知らないところで、
なにが起こってるのよ」

「ナオが不安がるはずたな…」


「ナオがどうして、不安になるの…」


「春ちゃんを本気で取りに来てるからよ」




「取りに来るって…
私が思ってるのは、ナオだから、
ナオ以外の所には、行かないと思う。
けど、久俊さんとは、
そのうち、仕事で毎日顔を合わすから」



「へえーっ、やっぱりしたたかね。
付き合ってれば、
ケンカしたり、こじれたりするのは、
当たり前だと思うけど。
もしダメになったら、
俺んとこに来いってことね」


「やっぱり、久俊さんは、すごいんだ…」

「ある意味、楽かもよ。単純な男より」