「先輩、昨日も、
ナオさんと一緒だったんですね」

由貴ちゃんにもそう言われた。
このところ、ナオの部屋から出勤してる。


「どうして?」
洋服も変えてるし、乗る電車も同じなのに。
由貴ちゃんが、軽く咳払いして、
小さな声で言う。


「首筋もっと隠してください。
女の子達、先輩の噂してますよ」


「うわ~っ。本当?」


一緒に居るのは、
昨日だけじゃなく先週からずっとだ。


「噂、広めちゃったかな…」


「私が言わなくても、
昨日、ご自分が何したのか自覚してます?

ナオさんがロビーで待ち構えて、
先輩にいきなりキスしてたら、
すぐに広まりますよ」

急に迎えに行くから、と言って
ナオは、ロビーに現れた。

そして、いきなりキスされたのだ。


「気をつけます」


「もう、遅いです。先輩、これ。
なぜか待ち合わせ前の、隠し撮りだと思う。
ばっちり取れてますよ。キスシーン」

ナオがここまでするとは、思わなかった。



「誰がこんなことするのよ」



「まあ、仕方ないんじゃないですか?
思わず、写真撮りたくなりますよ。
あの顔は…」



「ナオも、どうしちゃったのかな」


「先輩、本当、わかってないんですね」


「それより、
付き合うことになったんでしょう?
先輩には、付き合ってる男がいるっていう、
アピールじゃないですか」


「えっ?」



「係長に連絡しておいて下さいね。
なるべく早く開放してあげて下さい」