自分の出来事なのに、
まるで実感が湧かないのは
どうしてだろう。

夏の暑さから冷めた窓を触っていると
耳触りの良い声がした。


振り返ると、
そこには数学の桜井先生が居て
童顔で眉毛をキリッとさせながら
私に下校を促していた。


桜井先生は、戸締まりの為か窓際にきて
順に鍵を確認していたけど
私は、桜井先生との距離が近づく事にだけ気持ちが持っていかれてた。



だって、私は桜井先生に密かに想いを寄せてたから。


でも、みんなが
「桜井先生かっこいい」とか
「桜井先生大好き、可愛い」と口を揃えていうから、私はその輪に入りたくなかった。


多分、私の気持ちを他の人とまぜたくなかったんだ。


だから私は
桜井先生の興味をひかせる為に
「私なんだか疲れちゃった」
と甘える様に言ったの。