カフェに連れていってもらってから、最初の土曜日。


慶が通うS大理工学部の門で、慶と待ち合わせした。


人がたくさんいて、にぎやかなキャンパス。


理系だから男子が多いけど、女子も思っていたよりはいた。


大学って、高校とは全然ちがう。


制服はないし、なんか自由な感じがする。



約束の時間ぴったりに、慶は来てくれた。


「悪い、待った?」


「ううん、だいじょうぶ」


「じゃ、行くか」



慶はいつも、私の少し前を歩く。


そういえば、手をつないだり、腕を組んだりしたことないな。


ここは大学だし、人の目がよけい気になるからだろうな。



食べ物の屋台や、サークルのイベント、受験生向けの案内。


それを見ながら、慶についていく。


慶が連れていってくれたのは、教室だった。


「ここが、俺がだいたいいる部屋。


何もやってないから殺風景だけど、美久には見せたかったから」


「ふーん、ここで真面目に勉強してるんだ」


「ま、いちお」


「ね、慶は卒業した後のことも考えてるの?」


「まだ決まってないけど、海外の大学へ留学できたらなと思ってる」


「そっか、すごいね」


「有利な条件で留学するには、成績もっとあげないとな」



学食見たり、研究室を見たり。



「じゃ、屋上行くか」


と、慶にうながされた時。



「慶、待って」


と、後ろから声がした。