「は、はなせっ」



馬鹿じゃないだろうか


なんて鼻で笑いながら言ってやろうかと思ったけどさすがにそれはやめておいた。



「忠告をきかなかったのはそちらなんで。それに私がやめろって言って聞かなかったのに、私があなたの言うことを聞くとでも?」



手の中で逃げようと暴れるそいつを逃がさまいとグッと力を込め、挑発するように笑って見せた。


分かりやすすぎるその挑発に痴漢は真っ青だった顔を怒りに歪めた。



「だまれ!」



あら、外れちゃった。


一際強い力で抵抗され手から離れる。


両手が自由になった痴漢は私に向かって右拳を振り上げてきた


あーあ、逃げたら見逃そうかと思ったのに。



思わず二ヤっと笑みを浮かべそうになるのをなんとかこらえる。


その間にも真っ直ぐ私へと向かってくる拳


それに私の右手を添えて左にいなすと同時に身を低くして相手の懐へ飛びこむ。




ドスッ


「うあっ……!」



鈍い音と共に痴漢が悲痛な声を上げ左足を抱えうずくまった。