彼女の真っ白な肌に触れる間

何もかも忘れることが出来た



真っ赤に染まる人間も

真っ赤に染まる世界も

人を殺したい衝動も

たまに僕を襲う苦しみも



全部全部

忘れることが出来た




僕はまるで

名前も素性も何も知らない

目の前で喘ぐ彼女の

本当の彼氏になった気がした






行為を終え

僕の記憶は全て蘇った



僕は真っ赤な世界で生きている

彼女と住む世界は違うんだ



出て行こうとした

雪は止んでいるようだった

さっきまであんなに降っていたというのに



何か言いたげな彼女へ背を向け

僕は出て行こうとした





ありがとう

僕の口から言えない

お礼の言葉




全て

たったの数分だけど

忘れさせてくれて





ありがとう