「帰ろう。明日も部活だろ。」

帰ろう。

その一言だけでも、陸の彼女だと実感できる。

明日…とか。ちょっと数分時間を遡れば、嫌に感じたであろう言葉だけど、今なら喜べる。

明日が来るかどうかもわからないのに。

ちょっと明日に…未来に期待できる気がして。

すると、道端に小さな花が咲いているのが見えた。

陸も見つけたみたいで、物珍しそうに見ている。

私はこの花を知っている。何故なら、辛いときにいつもこの花を見つけると元気になれたから。

「この花、郭公薊っていうんだ。紫で可愛いよね。」

可愛いからっていうのもあるんだけど、花言葉がすてきだったから。

郭公薊の花言葉は、楽しい日々。

どんなに辛くても、楽しい日々が待っていると思って頑張れたんだ。

「可愛い。…なんか夏来みたいだな。」

「えっ?」

「なんか可愛いし、見てると元気になれる気がする。」

陸もなんだ…!

同じ気持ちなんて嬉しいけど、ちょっと照れくさいから言わない。

「私この花好きなんだよね。」

「俺も今好きになったよ。…なあ、この花の花言葉って何か分かる?」

「楽しい日々…だよ。なんか前向きになれるよね。」

前向き。この花もそうだけど、私が一番前向きになれるのは、陸を見てるときなんだよね。

陸は、私の太陽みたいな存在で。いつも私の道を照らしてくれるんだ。

…今だってそう。生きる希望を与えてくれたのは、やっぱり陸で。

「会えてよかった。」

「…え?」

「いや、陸に会えて良かったなあって。」

「俺も、夏来に会えてよかったと思うよ。」

――眩しい笑顔で笑う君に、私はもう一度恋に落ちた。