しばらくして、お医者さんがペンとノートを持ってきた。

「これでしばらく書いて見てください。記憶が曖昧になったら、報告してください。そして日記を見たり、私や看護師さんに聞くように。」

「はい。」

「じゃあ今日はこれで。ご飯の時には看護師さんが持ってきます。」

「はい!」

微笑みながら病室を出るお医者さんが、少し寂しそうに見えたのは気のせいだろうか…?

うーん…この事も書いておこうかな。

私は早速最初のページにペンを走らせた。




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7/15(月)晴れ

今日から日記を書き始めた。
何を書けば良いのかよく分からないけど、プロフィールでも書いておこうかな(笑)
蒼井夏来、17才。
AB型!
将来の夢は…


ここまで書いた時、目から涙が落ちてきた。

…私には、将来の夢なんてあったって意味無いんだ。

私の夢は、作曲家になること。

私が辛いときも、悲しいときも、嬉しいときも、楽しいときも。昔から音楽は…歌は私の側にあった。

時には歌を聴いて楽しくなったり。

時には歌を歌って泣いたり。

そんな、人の心が動かせる歌を作ってみたかった。

きっと世界には、私のように…歌に救われた人もたくさんいると思う。

だから、私の作った歌で誰かが救われたらいいなって…。

私は、夢を叶えることが出来ない。

どんなに頑張っても、私には…時間がない。

…このまま時が止まればいいのに。

病気を持ったままでもいい。時が止まれば、もっとみんなと一緒にいられる。

みっちゃんとも…バレー部のみんなにも…そして、陸にも。

…………陸に会いたいのはなんでだろう。