<夏来side>

しばらく泣いた後、ここが部室だということに気付いた。

時計をみると、そろそろ片づけが終わる時間だ。

…今日は、帰らせて貰おうかな。

静かに準備をして、部室のドアを開けた。

しまったドアを見て、なんだか色んなことが思い浮かんできた。

初めて此処にきたとき、みっちゃんとはぐれて先輩に助けてもらったっけ。

陸に初めてあったときは、廊下でぶつかって…謝って逃げちゃったんだけど、部活にきたら陸がいてびっくりしたなあ…

いつからか、陸が気になってて、山野君に手伝ってもらって告白したっけなあ…

陸が驚いて、俺も好きだったって言ってくれたときは嬉しかったなあ…



――ふいに、頭に衝撃が走った。


周りをみるとさっきと角度の違う景色。


倒れたという事実を理解するのに、これほど時間がかかったことはない。

あ、さっきの走馬灯だったんだ…。

人間は、死ぬとわかったとき、これほど落ち着いていられるのか…

「あと1ヶ月じゃなかったの…?」

私が笑いながら最後に言った言葉は、空しい位情けなくて…

暗闇のなかでポツリと消えた。

私が覚えているのは、月が、1年前のあの日みたいにとても綺麗なことだけだった。