<陸side>

「私は、1年前から病気で…余命1ヶ月と言われました。」

夏来が病気について話し始めた。何故かあまり悲しいと思わなかった。

「でも、陸やみっちゃん…未来、バレー部の皆のおかげで、1年も生きることができました。」

…1年も生きられたんだから、もう病気は治ったんじゃないかって。

「…でも、もう本当にあと1ヶ月だと言われました。」

夏来が話してることも嘘だと思った。

「で、でも何で…?まだ時間はあるんじゃ…」

1年生のマネージャーの子が必死な目で問いかけている。

「病院の先生にね、入院しないと、1ヶ月も生きられないって。」

「そ、そんなあ…なんで…なんで先輩があ…」

とうとう泣き出してしまった1年生に、夏来はなにもしてあげることが出来ないのか、ただ「ごめんね」を繰り返していた。

「ごめんね…。」

夏来を信じてない訳じゃない…信じたくないんだ。

「本当は今日伝えて今日辞める予定だったんです…でも。」

夏来は笑ってこう言った。

「でも、生きててもみんなと一緒にいられなきゃいやだから、1週間延ばしてもらったの。」

やめろよ…その笑顔…本当は辛いはずなのに…無理に笑うなよ……。

「だから、あと4日間、よろしくね。」

そう言ったあと、とうとう泣き出してしまった夏来。

「「おねがいしま…す…」」

みんな気の抜けた返事。

「じゃ、じゃあ、また明日…ね。」

夏来は泣きながら部室に走っていった。

呆然と立ち尽くしている俺の耳には…

「うわああああああああああああああああああ…」

夏来の泣き声も聞こえなかった。