下校時刻。
俺は彼女に呼び出されて屋上に来ていた。

「で。呼んだ理由って何?」

「…覚えてますか?」

彼女の第一声に疑問を覚える。

「日菜の事、覚えてますか?」

日菜。…その名前に聴き覚えはない。

…やばい、本当にわからない。

「ごめん、覚えてない…」

片手で覚えてないとジェスチャーしながら言うと、彼女は両手で俺の両肩を持ち、

「そんな…!!折角やっと高校生になれたのに…!!」

高校生に"なれた"?

ちょっと待て。となると、俺がこの子に最初にあった(らしい)のはこの子がまだ小さい頃…?

「え、ちょ、ちょっと待って。ごめん。
俺小学生誘拐した覚えとかないんだけど…」

そう告げると彼女は反論して

「誘拐じゃないです…!!
隠してないでいいんですよ…悠貴くん、」

と、答えた。
だが、俺は彼女は何をもって俺が何を隠しているのと勘違いしたのだろうか。

「だから知らないって!!隠すって何をさ!?」

少しムキになって言うと彼女は、僕の耳元でこう答えた。

「不死身ってことですよ。」

「…」

…驚いた。どうして彼女がそんな事を知っているのか。

そう。俺は不死身だ。中二病こじらせたとかそういうわけではなく、
俺は刺されても撃たれても、何をされたって死ぬ事ができないのだ。

だから俺はこうして普通の高校生を装い生活をしている

「図星ですか?」

「まぁね…、」

彼女の質問にそんな返しをすると、
彼女は言った。

「じゃ、じゃあじゃあ!!!1200年前の事覚え…」

「覚えてねぇよ!!!」

ツッコんだ。人生で初めてかもしれないがツッコんだ。

「普通に考えろよ!!俺も不死身で歳を取るのも遅いがその他は人間なんだからわかる訳ねえだろ!!」

彼女が黙り込む。

沈黙。

「…そ、うですか。」

彼女が俯いたままだったが、ようやく口を開いた。

「…私との思い出なんて、どうでもよくて忘れちゃいましたよね…

本当…バカみたい」

思い出…
俺にとって大切な…




…まて、そういえば…

「日菜…お前俺にあった時、髪の毛白かったか?」

「…あ、そういえばあの時はまだ黒かったかも…」

それなら心当たりがあった。

俺が両親と暮らしていた、まだ幼少期の頃だ。

「俺、よくお前のでかい家の中庭で氷菜と遊んだ…?」

それを聞いた直後、彼女はわかりやすいほどに喜びを見せて

「はいっ…!やっと思い出せて貰えた!?」

そう。
彼女との思い出は最速かつあっさりと思い出せてしまった。

「あぁ、…でもお前今どこに住んでんだよ、途中で引っ越ししただろ、お前」

「今は一人暮らししてます。すぐそこのアパートですよ」

学校の近くの家のアパートは数件立っている。

まぁ俺もその周辺のアパートに住んでいるんだけど。

「ふーん、まぁ、でもどうする…
思い出に浸ってる場合じゃないんだけど。」

「え?」


そう
俺達がはじめに話始めたのは夕方。

それを考えればわかるはず。もうあたりは暗くなり、先生も戸締まりの為にこちらにやってくる可能性だってある。

それなら、やることは一つのみ。


「よっし、帰るぞ!!」

「えっ!?」

俺は日菜の声を無視し、日菜の手を掴み猛ダッシュで昇降口に出た。


…やっと学校の門を出て一安心。

「っふぅ、大丈夫か、日…」

と、日菜がフラフラな事に気がついた。

「…大丈夫じゃないか…」

「い、いえぇぇ…ひ、日菜は、大丈夫ですぅぅう」

絶対に大丈夫じゃない。

「仕方ない…」

こんな事になったのは俺のせいだ。
まぁ元々体調が悪かったのかもしれないけど、俺が振り回して悪化させてるのは確かだ。

「日菜、乗って」

背に乗せる形になると、日菜は更に混乱して

「い、いいいいやややややや!!そそそそそそそ、そんんんな!!おんぶなんててててて!!」

「いいから乗れよ、嫌ならいいけどさ、」

「嫌じゃないです!!是非乗らさせていただきま…変な意味じゃないですからね!?」

「はよ乗れ!!!!」

彼女と俺は上手くやっていけるのだろうか。