それに、雨だ。
当たり前か…。
梅雨だ。
雨が降っている。
ビニール傘をおもむろにとった。
誰のか分からない、傘。
ありふれたビニール傘なのだから。
全部同じ。

ため息が出た。

イヤホンをして、傘をさす。
耳に流れる、ありふれたロックバンドのありふれたラブソング。
ありふれた、愛の言葉。
吐きそうだ、と思った。
あー、気持ち悪いと思った。
自分でも笑ってしまうくらい、性格が悪いのか歪んでいるのか。
これは、リアルが充実している人への嫉妬とかそういった類の感情が混じっているか…。
それは、ないな、と思った。
憧れたことが、ないからだ。
彼女とか、なんていうか、そういった青春的なものに。

雨が強くなった。
気持ちの悪いラブソングがどぎついメタルに変わった。
なにを言っているのか分からない歌詞。何をいいたいのか何を伝えたいのかわからない歌。
でも、ラブソングよりはずっと俺の心に響いてる気がする。
耳が痛くなるけど嫌いじゃない。

雷が鳴った。
俺は、歩いていた。
何処に向かうわけでもなく、ただ一人で。
人気のないところを目指している、気がする。
体が、それを求めている気がする。
乾いている。
本当は、きっと濡れたいのだ。
傘なんてさしたくないのだ。

激しく、叫ぶように、狂ったように、雨に濡れたい。

そう、体がいや、心が主張している。

俺は何処に行きたいのだろう?

また、ため息をついた。

雨はまだ止まないらしい。