しかし当人である結香が、時々救いの目であたしを見ていることを、あたしは知っていた。


担任にあたしたち3人が呼び出されたのは、そんな時だった。


「最近、犬飼と一緒に行動してないみたいだけど、なにかあったのか?」


職員室に立ちこめるコーヒーの香りをかぎながら、あたしは担任を見た。


担任教師はお昼を食べてすぐみたいで、少し眠そうな顔をしている。


真剣に質問している様子もなく、念のために聞いているという雰囲気だ。


「結香は最近小説にハマってて、それで一緒にいないんです」


初がすぐに嘘をついた。


しかし、結香が小説を読んでいるのはいつものことで、担任教師もそのことを知っている。


初の模範解答のような返事に担任教師は満足そうに頷いた。


「そうか。ケンカをしたワケじゃないんだな?」


「ケンカなんてしてません」


つぐみが言う。


たしかに、喧嘩はしていない。