藤宮桜花は早速入部届けを零に書かせる。


零はすぐに書き終えて藤宮に渡す。


「確かに受け取ったわ。じゃあ伊地野くんはもう帰って良いわよ。顧問の先生が来るときだけ居てくれたら良いから。」


「そうですか…。」

そう言われ、零はカバンをもって帰ろうとする。

零は冷静であったが内心穏やかでは無い。

桜花のあの発言はまるで零を同じ部員として見ていない発言である。




考えて見ると茶道に興味が無いんだから、確かにやる気のある人からすれば部員として見ることは出来ないかもしれない。


でも心の中で思うのならまだしも、それを口に出したらおしまいだろっ…!

明らかに人を邪魔者扱いする奴がいる部活に誰がいくかよっ…!



零が心の奥底で怒り狂っていたとき、飛鳥が桜花に発言する。


「ちょ、ちょっと…!桜花先輩、酷いですよ。零くんを邪魔者扱いなんて…。」


「黙りなさい。」

桜花の冷たい声が飛鳥の声を遮る。


「ここ茶道部は基本的には女子だけの部活。一応、過去には茶道好きの男子もいたわ。しかし、伊地野くんは茶道が好きなわけでも無いし、頭も悪そう。私の部活にいても楽しくないでしょう。」




つまり…なんだ…?
結局…俺は頭数か…?

てか、頭悪そうって何だよ…?


零は怒りが爆発しそうである。



「言い過ぎじゃないですかねぇ…。俺は学が無いが知識は有りますよ…?」



『頭が悪そう』と言う言葉に零は腹が立った為、言い返してしまった。




それと同時に零は藤宮桜花に認めて貰いたいと思った。


零は今まで、誰かに認めてもらいたいなど思った事が無かった。


だが、藤宮桜花を前にして初めて認めてもらいたいという感情が出た。




「へぇ?なら貴方の知識を試させて貰いたいわ。今度、学校から出る部活動の援助金の話を各部の代表者とやるんだけど、貴方の知識で私の茶道部の部費を増やして見せてくれるかしら?」



零は「ニヤッ」と笑った。

交渉は零の得意な事。それに各部の情報を得れば、使いようによっては幾らでも自分の優位に動かせられる。



「桜花先輩、アンタを驚かせてやるよ。俺にかかれば部費の交渉なんざ簡単よ。」


零はそう言い出ていく。


「ちょ、零くん?」


飛鳥は部屋を出ていった零を追いかける。