しばらく固まった零であったが、ゆっくり動き出した。


零は「日向さんはなぜ、いきなり俺に告白したんだ?」と考える。



零は正直、女の子に興味はある。


だが零は他の男子とは少し違う。

他の男子は彼女を作るために必死に頑張っているが、零は「彼女は欲しいけど彼女を作るための努力は嫌だ」と言う奴である。


つまり努力せずに女の子と付き合いたいのである。


そして今回、努力せずに女の子に告白された。



ここで零は疑問を抱く。


いきなり告白されたのはドッキリでは無いのかと。


零は昔を思い出す。

こういうのやる奴、中学時代にいたな…と。


可愛い女の子が冴えない地味な男子を人気の無いところに呼び出して告白。

そして、満面の笑みでOKを出す男子の表情を隠れて見て笑う女子の友達。


中学時代にそれをやられてイジメられていた奴を見たから女の告白は正直怖い。




しかし、日向さんは一年のイメージでは大人しい人だったはず。


日向さんの友達グループも真面目な人ばかりだったし、そんな人がドッキリなんてするだろうか?


零はそれを考えながら帰宅する。



帰宅すると零は真っ先に服を着替え、ベッドに転ぶ。



そしてまた、さっきの事を考える。




日向さんは大人しい人だが、俺を好きになる理由もないはず。


頭も悪く、授業中に失敗ばかり。

運動神経も普通以下だし、まともに会話すらした記憶がない。


そして、俺は学校には友人がいないから、日向さんが友人から俺の事を聞くなんて事も有り得ない。



「俺は…無なんだ。何も掴んでいない。頭も悪けりゃ運動神経も悪い。金も無ければコネもない。何も無い人間が彼女なんて望んじゃダメだろっ…!」


ぶつぶつと独り言を言う零は結局、自分でもどうすれば良いか分からない。


相談する人はいるが、自分の事を他人に相談するなんて出来ない。


己のことは己で答えを出さねば…。