「そ、それよりさっきの交渉凄かったよ。どこであんな情報仕入れたの?」

食い入るように聞いてくる飛鳥だが、零は「情報屋から買った」と冗談ぽく言うだけであった。



「人間ってな、弱味の無い人なんていないんだよ。」

零は鼻から煙草の煙を出す。

煙草を吸ったことがない人には分からないと思うが肺に煙を入れたら鼻から煙が出る。


この瞬間が気持ちいい零である。


「みんな弱味を持っているものなの?」

「ああ、そうさ。飛鳥さんだって弱味の1つや2つあるだろ?」


飛鳥は「そういえばっ…!」という顔をした。


塾に行くのめんどくさくて親に内緒でサボった事を思い出した。

これがバレたら間違いなく親に大説教である。



「まぁ、その弱味を利用して揺さぶれば人は交渉しやすいんだ。あまり気は進まないがな…。でも、これで俺も茶道部の一員だな。」


確かに人の弱味を利用して揺さぶるのは良いことではない。

もしかして零くんは頼まれたから仕方無くやったのかな?


でもそれは少し聞きにくい。


何はともあれ、零くんは無事に茶道部の一員なったし、これからは部室で二人だけの空間で会える。



この時の飛鳥は幸せを感じていた。


しかし、零は冷めた目で現実を見る。


学校の部活動ごときで莫大な金が動いていることに。


そしてその金は何一つ俺達に還元されていない現実に。



部活動でこれなら社会に出るとどれだけ金・欲望が渦巻いているのか。



この時、零は胸に大いなる野望を抱いていた。